私はその人を常に先生と呼んでいた—。鎌倉の海岸で出会い、親交を重ねて行く先生と私。しかし、どれだけ近づこうとしても、先生は世の中のすべてに心を閉ざしていた。ある日、故郷にいた私の元に、先生から遺書が届く。その中で初めて語られる先生の過去とは……。人間のエゴイズムと倫理観の深い葛藤を描き、明治の知識人の心の闇を浮き彫りにした漱石後期三部作の終曲。本書では、「下 先生と遺書」の後半とそれまでのあらすじを収録。
江戸牛込に生まれる。帝国大学 (現在の東京大学) 英文科卒業。1900年から1902年には、文部省の命で留学生として英国に滞在する。帰国後、大学で教鞭をとる傍ら1905年に『吾輩は猫である』で文壇に登場。以降、『坊ちゃん』『三四郎』など数多くの作品を発表し、日本を代表する作家となる。晩年は病に苦しめられながらも、『こころ』『行人』などの名作を生み出した。