羽田庄兵衛の船に、一人の罪人がのせられた。喜助というこの男は、弟殺しの罪で遠島を申し渡されたという。しかし、喜助はなぜか穏やかで、晴れやかな顔をしている。それが庄兵衛には不思議でならず、とうとう喜助に声をかけてしまう。医者ならではの鋭い視点で、現代に通じる安楽死問題を突き付けた、森鴎外の代表的短編小説。
1862年、石見国津和野 (現在の島根県) に生まれる。第一大学区医学校予科 (現在の東京大学医学部) へ入学し、陸軍軍医となる。1884年ドイツに留学し、衛生学など学ぶ。1888年に帰国してからは本業の傍ら、文筆活動をはじめ、『舞姫』『山椒大夫』『高瀬舟』などの傑作を残した。